《明治維新150周年・市景観計画施行10周年記念第5回鹿児島市景観まちづくり賞(建築部門)を受賞》
萩原技研本社ビル
所在地:山下町16-20
建築主:株式会社萩原技研
設計者:株式会社Dai建築DESIGN
施工者:株式会社ミツバ建設
用途:事務所
構造等:鉄骨造6階
延面積:1,095.99平方メートル
萩原技研本社ビル
<評論>
鹿児島市の中心地の市電通り沿いに建つオフィスビルである。周辺には時代を象徴する建物が数多く残っている由緒ある場所で、約40年間の歴史を地域社会とともに歩んできた建設コンサルタントが、自社の命運をかけて「働き方改革」の発信の場として実現した建物である。西側に城山、南側に天文館、東側に桜島を望む眺望の良さは、「空が見える」「海が見える」「山が見える」という経験をもたらし、働く人間のモチベーションを高める環境となっている。
都市軸となる電車通りから眺めると、凹凸のあるファサードが印象的であるが、そこには真っ白な壁面と奥まった位置にあるグレーの壁面、豊かな緑の植栽、陰影をつくり出すバルコニーなどが、美しいコントラストを形成していることが分かる。こうした「開かれたハコ型」とすることにより、窓からは明るい太陽の光が降り注ぎ、バルコニーにより夏季の直射日光による負荷を軽減し、緑化により心地よい風を呼び込むという、人間と自然環境との調和を実現している。
敷地前にバス停があり、バスを待つお年寄りや子ども連れの女性の利用者が多いことを踏まえて、1階ピロティ部分に地域貢献のためのパブリックスペースを確保している点も特筆に値する。四季の変化が楽しめる樹木を選定して植栽し、花壇横には庇の下でバスを座って待つことができるベンチを設けるなどの工夫が行われている。
内部は「人と人の”つながり”の場」として、ロングスパン架構によりフレキシビリティーの高い空間を確保し、オープン階段や吹き抜けを介して上下階の空間の一体化を図るとともに、白を基調とした内装材にフローリング調の床材を組み合わせて親しみのある空間とし、さらに働き方に対応した多様な家具を用意することで、新しいワークスタイルに対応したオフィスを追求した試みとしても高く評価できる。